最近、かの有名な解剖学者、養老孟司先生が「たばこの害や副流煙の危険は証明されていない。」とおっしゃって、またタバコ論議がちょっと再燃していました。
完全無欠な科学的証明、というのはとても難しく、いろいろな条件が整っていなければ本当の証明とは言えません。その点を突いて「証明されていない」とおっしゃったのだと思います。
そういう点からすると、何で効くのか証明されていない・・・というような薬も医療の現場で沢山使われています。
でも、実際のところタバコについての研究はさかんに行われていて、
疫学的な面からいろいろな病気と関連がある、
ということは明らかにされています。
そもそも、解剖してみると、喫煙者の肺は真っ黒で、
それを見ただけでも私は「う、美しくない・・・」と思いますし、
一見美しい人がタバコを吸っているのを見ると、あのべったりと黒い肺を思い出してしまうので、その方の美しさが何割か減って見えてしまいます。
日常、診療をしていても、ある程度喫煙している期間が長くなっている人はお肌をみれば大抵わかります。
どことなくくすんで、ぱさついた感じ。
でも実際のお肌は脂っぽいところもあって、にきびも出やすい・・・
まれに、えっ吸っているの?というきれいなお肌の人もたまーにいらっしゃいますが、
それはタバコによる酸化ストレスも打ち消すことができるくらい成長ホルモンやメラトニンやらの抗酸化物質の活性が高いと思われる若い人くらいです。
ある程度お歳がいくと、がくっとその影響は目に見えて出てくるように思います。

みなさん、タバコの危険性というと『肺がん』としか思い当たらない方が多いですが、
本当にもっともっと怖いのはそれだけじゃありません。
確かに直接タバコの煙が入っていく気道や肺は影響をもろに受けます。
喫煙の結果、気道や肺に異常な炎症が起こっている病気で『COPD(慢性閉塞性肺疾患)』と呼ばれるものがあります。
この病気が進むと、鼻にチューブをつけて酸素ボンベを引きながらでないと歩けない、
あるいはゼイゼイしてしまうので動くこともままならない、ということも起こります。
決してこれは珍しい病気ではありません。
COPDは「たばこ病」とまで称されるもので、
咳払いや痰の多い人はすでにこれにかかっている疑いがあります。
それに、『食道がん』『舌がん』などもタバコとの関連が認められています。
形成外科ではこのガンで大きく食道や舌を切り取らなければならなくなった人にその人の別のところから組織を持ってきて「再建手術」というのを行ったりします。
大変苦しくて負担の大きいことです。
それから、『パージャー病』といって足が腐ってくる病気もあります。足の血管が詰まって酸素や栄養が行かなくなってしまって、皮膚に潰瘍ができるのです。この潰瘍はほんとうに治りづらくて、いつまでもグジュグジュした汁が出たりします。
タバコに関連する嫌な病気は沢山あるのに、知らずにパカパカ吸っている人の多いこと。
うちの病院では館内禁煙ですが、外の喫煙所で点滴をぶらさげてタバコを吸っている人を見ると、
口は悪いですが、「ああ、医療費泥棒・・・」とつぶやきたくなります。
財布にもカラダにも悪いから減らそう・・・と思ってくれた方には申し訳ありませんが、
残念ながら、減らそうと思えば思うほど、その一本を大事に思って深く吸ったり、
フィルターぎりぎりまで吸ってしまう方が多いと思います。
かえって悪影響を及ぼすことがあるので、節煙・減煙ではなく、禁煙を!
難しい方は(自分はニコチン依存症だという自覚をもって)専門医にかかって治療、という形で禁煙したほうがいいかもしれません。
タバコにはその成分の毒性が直接作用して起こす病気も多いですが、
タバコを吸うと血管を縮めてしまい、血流が悪くなります。
この
『血流』というのは健康で美しいカラダにとって一番といってもいいくらい大事です。
栄養や酸素なくして、痛んだ組織は治りません。
それから、痛んだ組織が治ろうとして出す毒素も洗い流さなくてはいけません。
それには
『血流』です。
どんな病気でも、いい『血流』なしではなかなか治りません。
『血流』は自然治癒力を支える大きな柱であることは間違いありません。
事故で指を切断してしまった患者さんには、手術でその指をつないだ後、「頼むからタバコは吸わないで」とお願いしています。
順調に経過していてもある日包帯をあけてびっくり、
色が悪くてこんなはずでは!
本人吸ってないというので、何が悪いのか・・・と思ったら、友人達がパカスカ吸っている所にいたとのこと。
他にも理由はあるかもしれませんが、副流煙も原因だったようです。
指の切断までいかなくても、傷の治り具合(創傷治癒)もタバコを吸っているかいないかで目に見えて違います。
傷は早く治ればその分傷跡もきれいです。
普通に過ごしている人にとってこれらの怖い病気の話なんて遠い話かもしれませんが、
より健康に美しくなりたい人にとっては、そんなことではいけません。
次は”
美容篇”です。